給与所得者には、勤務に伴う必要経費の概算控除として、「給与所得控除」が給与の年収額に応じて定められています。平成23年度税制改正大網によれば控除額に上限が設けられ、さらに役員給与における給与所得控除の見直し等と高額給与所得者の取り扱いには注意が必要となります。
1.給与所得控除の上限設定
現在の給与所得控除は、給与収入の金額に応じて控除額が増加する仕組みとなっており上限がありません。しかしながら、給与所得者の必要経費が収入の増加に応じて必ずしも増加するとは考えられないこと、主要国においても定額または上限があること等から上限が設けられました。
給与収入1,500万円超の給与所得控除:一律245万円
2.役員給与等に係る給与所得控除の見直し
法人役員については、一般従業員に比べ勤務態様が必ずしも従属的でないと考えられることや、給与の自己決定度合いが高いこと等を踏まえ、2,000万円を超える高額な役員給与については給与所得控除の見直しが行われました。
@給与収入2,000万円超2,500万円以下:245万円−(給与収入−2,000万円)×12%
A給与収入2,500万円超3,500万円以下:185万円
B給与収入3,500万円超4,000万円以下:185万円−(給与収入−3,500万円)×12
C給与収入4,000万円超:125万円
‐給与所得控除見直しによる比較表‐
給与収入別に給与所得控除額を現行と改正案で比較すると次のようになります。
給与収入の金額
|
500万円
|
1,000万円
|
1,500万円
|
2,000万円
|
2,500万円
|
3,000万円
|
4,000万円
|
給与所得 控除の額
|
現行
|
154万円
|
220万円
|
245万円
|
270万円
|
295万円
|
320万円
|
370万円
|
改正案
|
一般 従業員
|
一律245万円
|
役員
|
245万円
|
185万円
|
185万円
|
125万円
|
3.特定支出控除の見直し
給与所得者の特定支出控除の特例は、その年中の特定支出(一定の通勤費、転居費、研修費等をいいます)の額の合計額が給与所得控除額を超える場合に、確定申告により、その超える部分の金額を給与所得控除後の給与等の金額から控除できるという制度です。今回の改正案により、特定支出の範囲が拡大され、摘要判定・計算方法が見直されました。
※ 本記述は平成23年度税制改正大網をもとに作成しており、今後変更となる可能性があります。
|