平成13年9月30日以前に取得した上場株式の取得費の特例制度は、平成22年12月31日の期限をもって廃止されます。これにより、平成23年1月1日以降、取得価額の不明な株式を譲渡する場合には、譲渡価額の5%相当額を取得費として譲渡所得を算出することが予想されます。
一般的には、5%相当額を取得費とする場合、みなし取得費と比較して譲渡所得が増えることが多いため、年内の売却、もしくは取得価額の把握等の検討・対策等が必要です。
1.みなし取得費の特例制度の概要
平成13年9月30日以前から引き続き所有していた上場株式を平成15年1月1日から平成22年12月31日までの間に譲渡した場合、上場株式の取得費は平成13年10月1日おける価格の80%相当額とすることができるため、譲渡所得の申告において納税者は、実際の取得費と平成13年10月1日の終値の80%相当額とを比較して、いずれか有利な方を選択し、申告することができます。
2.事例による税額シミュレーション
平成13年9月30日以前に取得したが、取得費が不明な株式を譲渡する場合、平成22年12月31日までの譲渡か翌日 以降の譲渡かにより譲渡所得金額が大きく異なるケースがあります。次の事例によりその影響額について検証してみ ます。
≪事例≫
平成12年12月、父の相続によりA社株式2,000株を取得したが、父がいくらで取得したのかは不明である。
【前提条件】
A社株式の平成13年10月1日株価
:355円(「平成13年10月1日における上場株式等の株価一覧表」による採用価格)
A社会株式を360円で譲渡する。
【譲渡所得の計算】
(1) 平成22年12月31日までの譲渡事例
取得費の特例による金額
355円(採用価格)×80%=284円
※360円×5%=18円 284円と18円のいずれか有利な方で申告可能なため、284円を取得費として
譲渡所得を算定する。
(360円−284円※)×2,000株=152,000円
(2) 平成23年1月1日以降の譲渡事例
360円×5%=18円
(360円−18円※)×2,000株=684,000円
※相続による取得のため取得費は父の取得費が引き継がれるが、取得費不明のため、譲渡価額の5%を
もって取得費とする。
3.平成22年12月31日までの検討事項
上記シミュレーション結果を検証すると、平成22年12月31日を境に譲渡所得金額に相違があることが確認されます。
取得価額が不明な上場株式を所有されている場合には、平成22年12月31日までに株式を譲渡するか、取得価額を
把握するかの検討が必要です。
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