1.非上場株式を相続した場合の納税猶予制度
非上場会社の株式は換金性が乏しいにもかかわらず、評価額が高額となり、相続に際して多額の相続税負担を強いられることがあり、事業承継の大きな障害になっているとの指摘がありました。そのような意見を踏まえ、平成21年度の税制改正により「取引相場のない株式に係る相続税の納税猶予制度」が創設される予定です。
取引相場のない株式に係る相続税の納税猶予制度とは、事業承継する相続人が、非上場会社を経営していた被相続人から相続または遺贈によりその会社の株式等を取得し、その会社を経営していく場合には、その事業を承継した相続人が納付すべき相続税額のうち、相続または遺贈により取得した株式等に係る課税価格の80%に対応する部分の相続税の納税を猶予するという制度です。さらに一定の要件を満たせば将来的には相続税は免除されます。
この制度の活用ができれば、自社株の評価額の20%相当だけの納税だけですむため、自社株の評価額が高く将来の事業承継に懸念を抱いていた方にとっては大きな朗報といえます。
ただ、相続した株式を売却したり、事業を廃止した場合には納税猶予されていた相続税を利子税とともに納付しなければなりません。また、要件や手続きも複雑な部分もありますので、実際の検討にあたっては専門家に相談することが肝要です。
2.贈与税の納税猶予制度
上記の相続税の納税猶予制度は、あくまで将来相続が発生した場合に適用ができるものであるため、生前の事業承継には利用ができません。
そこで、生前の円滑な事業継承を促進する目的で、「取引相場のない株式に係る贈与税の納税猶予制度」が創設される予定です。
取引相場のない株式に係る贈与税の納税猶予制度とは、後継者が、非上場会社を経営していた親族から、贈与によりその保有株式等の全部を取得した場合には、その株式等の贈与に係る贈与税の納税を猶予するという制度です。なお、将来、贈与者が死亡した場合には、引き続き保有する株式等を相続により取得したものとみなして、贈与時の時価により他の相続財産と合算して相続税額を計算することとなります。その際、一定の要件を満たせば上記1の相続税の納税猶予制度を適用することもできます。
この贈与税の納税猶予制度の創設により、生前の計画的な事業承継対策の立案が可能となることが期待されています。
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