我が国では3月決算の会社が多いため、5月〜6月の時期に株主総会を開かれる会社も多いと思います。株主総会は原則としては株式会社の組織、運営、管理その他一切の事項について決議することができ、取締役会を設置している会社では定款、会社法に規定する事項等に限り決議することができる重要な機関です。同族会社であっても会社設立時に資金繰りの関係や営業上の効果を期待して同族関係者以外の第三者に少数だけ実際に出資してもらうことがあるのではないでしょうか。その後その第三者から株式の買取り等を行わず会社が大きくなり、どこかでオーナー株主と少数株主の利害が対立してしまった場合の会社の危機管理はできているでしょうか。原則として2/3以上をオーナー株主が持っていれば、特別決議を成立させることはできますが、会社法では少数株主にも一定の権利を認めています。つまり非公開会社である同族会社であっても日頃から株主対策に注意を払っておく必要があります。
1.会計帳簿の閲覧等の請求
一般的な同族会社では、少数株主に計算書類の細かい内容などをオープンにしていないことが多いため、オーナー株主と少数株主の利害が対立した場合、少数株主は会計帳簿の閲覧等の請求を行うことが考えられます。この請求は原則として、総株主の議決権の3/100以上の議決権を有する株主又は発行済株式の3/100以上の数を有する株主が、請求の理由を明らかにした上で株式会社の営業時間内はいつでも会計帳簿の閲覧又は謄写の請求ができるというものです。ここでいう会計帳簿とは計算書類及び付属明細書の作成の基礎となる帳簿である総勘定元帳等であると考えられています。
2.株主総会に関する少数株主権
会計帳簿の閲覧等をおこなった利害の対立する少数株主は次の手として例えば株主総会の招集請求や株主提案等を行うことが考えられるので、行使できる株主の要件を事前に確認しておく必要があります。
(1) 株主総会の招集請求権・・・総株主の議決権の3/100以上の議決権を有する株主は、取締役に対して、株主総会の目的である事項、招集の理由を示して、株主総会の招集を請求することができます。(※)
(2) 株主提案権・・・取締役会設置会社の場合、原則として総株主の議決権の1/100以上の議決権又は300個以上の議決権を有する株主は、原則として株主総会日の8週間前までに一定の事項の議案提案ができます※。また、取締役会非設置会社の場合は議決権の割合や保有期間、時期に関係なく、一定の事項の議案提案ができます。
(3) 株主総会等の決議の取消しの訴え・・・株主総会等の決議の方法が著しく不公正な場合、決議の内容が定款に違反する場合や著しく不当な議決がされた等の場合には、株主は株主総会等の決議日から3ヶ月以内に、決議の取消しを請求することができます。あるいは決議無効・決議不存在の訴えの定めもあります。
3.その他の少数株主権
利害の対立した少数株主が行うことが考えられるその他の手段として、役員解任の訴えや業務の執行に関する検査役の選任等が考えられます。
(1) 役員解任の訴え・・・役員の職務の執行に関し不正の行為があった等一定の事由に該当する場合には、原則として総株主の3/100以上の議決権を有する株主又は発行済株式の3/100以上の数の株式を有する株主はその役員の解任を請求することができます※。
(2) 業務の執行に関する検査役の選任・・・原則として総株主の議決権の3/100以上の議決権を有する株主か発行済株式の3/100以上の数の株式を有する株主は、一定の事由がある場合に会社の業務及び財産の状態の調査のため、裁判所に対して検査役の選任を申し立てることができます。
※公開会社の場合には、6ヶ月間の保有が要件に加わります。
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