1.償却可能限度額の廃止
これまでの減価償却制度は取得価額の95%までしか償却することができませんでしたが、平成19年度の税制改正で償却可能限度額が撤廃され、1円(備忘価額)まで償却可能となりました。
そもそも、償却可能限度額が95%までだったのは、その固定資産の法定耐用年数経過時点におけるスクラップ価額に相当する残存価額を5%相当と見積もっていたためです。しかし、昨今の経済状況を考えると廃棄設備等についてスクラップ価値が存在することは稀で、逆に処分費用が生ずることも少なくありません。にもかかわらず、当該設備を除却等するまで永遠に残存価額5%を帳簿上残しておかなければならないのは不合理ということで、現在の経済状況に適合するために備忘価額を残して全額償却が可能となりました。
2.既存設備の残存価額
平成19年3月31日以前に取得した固定資産については改正前の償却可能限度額(取得価額の95%)まで償却し、償却可能限度額まで償却した事業年度の翌事業年度以降5年間で、備忘価額1円を残して均等償却することとなります。
3.残存価額の廃止に伴う償却費の変化
残存価額の概念が廃止されたため、定額法・定率法の償却費の計算が変わりました。
<定額法>取得価額100万/耐用年数10年の場合
改正前の償却費:100万円×0.9÷10年=9万円
改正後の償却費:100万円÷10年=10万円
<定率法>
残存価額の廃止に伴って、定率法の償却率は定額法の償却率を2.5倍とした数とする250%定率法という新しい償却方法が採用されました。この償却方法により償却率が大きく上昇し、改正前と改正後の償却率を比較すると下表のとおりとなります。
法定耐用年数
|
2年
|
3年
|
4年
|
5年
|
6年
|
7年
|
8年
|
9年
|
10年
|
定率法
|
改正前
|
0.684
|
0.536
|
0.438
|
0.369
|
0.319
|
0.280
|
0.250
|
0.226
|
0.206
|
改正後
|
1.000
|
0.833
|
0.625
|
0.500
|
0.415
|
0.355
|
0.312
|
0.277
|
0.250
|
|