会計事務所 税理士事務所 長崎県 佐世保市

損益通算と内部通算の検討(2006.12)

 個人の方が株式や不動産、ゴルフ会員権などを譲渡し、損失が発生した場合には一定のルールのもと、所得の通算が可能で所得税・住民税が安くなることがあります。今回は「損益通算と内部通算」について取り上げたいと思います。

1.損益通算と内部通算の違い

 所得税の計算は、所得を事業所得、不動産所得、譲渡所得などの10種類の所得に区分して計算することとなります。

 「損益通算」とは各種所得の計算において発生した損失を他の所得と通算することをいいます。一方、同一の所得の計算において赤字と黒字を通算することを「内部通算」といいます。

2.譲渡所得の分類

 株式や土地・建物、ゴルフ会員権などを譲渡した場合、所得の区分は同じ譲渡所得となります。しかし、同じ譲渡所得でも税率や計算方法が異なるため、それぞれ「有価証券の譲渡」「土地・建物の譲渡」「総合譲渡」として別々に計算することとなり、上記の「内部通算」も別々に行うことになります。

3.損益通算の制限

 損益通算は全ての所得で発生した損失についてできるのではなく、不動産所得、事業所得、山林所得、譲渡所得の4つの所得で発生した損失に限定されています。

 さらに、上記の所得で発生した損失が無条件に損益通算が可能なのではなく、以下のような一定の制限が課されています。

 ・不動産所得の金額の計算上生じた損失のうち、土地等に対応する借入金利子の金額

 ・土地・建物の譲渡損失の金額

 ・株式などの有価証券の譲渡損失

 ・個人の趣味や娯楽に係る貴金属、別荘などの生活に通常必要ではない資産の譲渡損失

4.ゴルフ会員権の譲渡損失

 ゴルフ会員権の譲渡は一見すると上記3の生活に通常必要ではない資産に該当し損益通算はできないように思われます。しかし、ゴルフ会員権はこれらの資産には含まれず、譲渡損失が発生した場合には総合譲渡の損失として給与所得などの他の所得との損益通算が可能となります。

 このゴルフ会員権の損益通算は数年前から廃止されると言い続けられていますが、現在のところまだ通算は可能です。ただ、いつ廃止になってもおかしくない情勢ですので、含み損を抱えているゴルフ会員権をお持ちの方は年内の譲渡を検討してみるとよいかもしれません。