ブランドのライセンス使用料や製造技術など工業所有権の使用料を外国法人や非居住者へ支払っている企業も多いと思います。外国法人や非居住者への支払は思わぬところで源泉徴収義務が発生する場合があるため、どのような場合に源泉徴収の必要があるか自社の取引に照らし合わせて整理しておく必要があります。
1.源泉徴収について
外国法人や非居住者は、その所得の源泉が日本国内にある一定の国内源泉所得に対して所得税の納税義務を負います。そして外国法人や非居住者に配当や使用料などの一定の所得を支払う場合の支払法人は、支払金額に一定の税率を掛けて算出した所得税を源泉徴収する必要があります。
したがって、例えば外国法人に工業所有権や著作権の使用料を支払う場合には、原則として支払金額の20%を源泉徴収することとなります。
源泉徴収した所得税は原則として支払いの日の属する月の翌月10日までに納付する必要があります。
外国法人や非住居者に対して支払う時に源泉徴収しなければならない主な所得の種類、内容、源泉徴収税率は次の通りです。
種類
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内容
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源泉徴収税率
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1.組合契約事業利益の配分
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国内において民法に規定する組合契約等に基づいて行う事業から生ずる利益で契約に基づいて配当を受けるもの
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20%
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2.土地等の譲渡の対価
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国内にある土地等の譲渡の対価
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10%
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3.人的役務の提供事業の対価
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国内において行う人的役務の提供を主たる内容とする一定の事業に係る対価
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20%
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4.不動産の賃貸料等
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国内にある不動産等の貸付の対価
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20%
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5.配当等
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国内法人から受ける利益の配当、剰余金の分配等
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20%※
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6.貸付金の利子
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国内において業務を行う者に対する貸付金で、その業務にかかるものの利子
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20%
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7.使用料等
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国内において業務を行う者から受ける次の使用料でその業務に係るもの
@工業所有権等の使用料又は譲渡対価
A著作権等の使用料又は譲渡対価 等
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20%
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8.給与、人的役務の報酬等
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給与等その他人的役務の提供に対する報酬のうち、国内において行う勤務その他の人的役務の提供に基因するもの
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20%
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9.匿名組合契約等利益の分配
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国内において事業を行う者に対する出資のうち、匿名組合契約等に基づく利益の分配
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20%
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※ 上場株式等の配当等で一定のものは7%
2.租税条約との適用関係
外国法人や非居住者に対して支払う国内源泉所得の課税においては、国内法である所得税法よりも日本とその相手国とで締結した租税条約が優先されます。したがって、国内法とは異なる国内源泉所得の範囲や所得税の軽減又は免除等が租税条約で定められている場合は、その規定に従うことになります。
例えば、アメリカの法人にライセンス使用料を支払う場合、国内法によれば原則として20%の源泉徴収が必要となりますが、日本とアメリカで締結している日米租税条約では、日米間における投資交流の一層の促進を図るとの観点から、一定の書類を事前に税務署長に提出した場合は免除とすると規定されており、源泉徴収する必要がなくなります。
また、平成18年には日英租税条約、日印租税条約について改正が行われているため注意が必要です。 |