平成18年度の税制改正のなかに、実質的にオーナー社長が一人で経営しているような会社について、役員報酬の一部を損金不算入とするという項目が含まれています。この改正は唐突ということもありますが、税務実務の中では驚くべき改正という注目を集めています。今回はこの改正の概要についてご説明します。
1.会社を作るとなぜ節税になるのか
個人事業者が会社を作ると節税になるとよく言われます。これは、法人と個人の税率の格差という点などもありますが、「給与所得控除」というみなし経費が利用できるからです。
すなわち、社長が会社から役員報酬をもらった場合には所得税等が課税されますが、収入に対して直接課税されるのではなく、「給与所得控除」というみなし経費を差引いてくれます。そのため、個人事業で所得税等の課税を受けるより、会社を設立して役員報酬を受ける方が「給与所得控除」の分が有利になるといわれています。
2.損金不算入制度の概要
今回の改正により、一定の同族会社について上記の「給与所得控除」に相当する金額が損金不算入となり、実質上節税ができなくなってしまいました。制度の概要は以下のとおりです。
(1)対象となる法人
同族会社のうち、業務を主宰する役員及びその同族関係者等が、発行済株式総数の90%以上の株式を有し、かつ、常務に従事する役員の過半数を占める場合等に該当する法人が対象となります。
(2)損金不算入となる部分
上記(1)の同族会社がその業務を主宰する役員に対して支給する役員報酬のうち、「給与所得控除」相当額が損金不算入となります。
(3)適用除外のケース
次の@またはAに該当する場合にはこの規定は適用されません。
@ 同族会社の所得等の金額(所得の金額と損金の額に算入された給与の額の合計額)の直前3年以内に開始する事業年度における平均額が年800万円以下である場合。
上記3年間の平均額が年800万円超3,000万円以下であり、かつ、その平均額に占める給与の額の割合が50%以下である場合。 |